まあ君たちも座れば(奥田順平さん、奥田直美さん/カライモブックス)

熊本県水俣市で古本屋「カライモブックス」を営む奥田順平さん、奥田直美さんのインタビュー前編「まあ君たちも座れば」を公開しました。
出版フィールドワークプロジェクト 2026.09.07
誰でも

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熊本県水俣市で古本屋「カライモブックス」を営む奥田順平さん、奥田直美さんのインタビュー前編「まあ君たちも座れば」を公開しました。

石牟礼道子の文学に惹かれ、2009年に京都で古本屋を開いたおふたり。水俣への憧れを抱き続け、2023年、石牟礼道子の旧宅へ店を移します。京都での最初のお客さんの思い出、水俣へ移って変わったお客さんとの関係、全国から送られてくる古本と、そこからつくられていく棚。京都から水俣へ。ふたつの土地で店を営んできたおふたりの言葉から、カライモブックスという場所がどのようにつくられてきたのかをたどります。

編集の舞台裏

今回のインタビューは、石牟礼道子の旧宅であるカライモブックス、その仏壇の前で収録しました。すぐそばには実際に使われていた書斎があり、『食べごしらえ おままごと』の舞台となった台所があります。石牟礼道子が暮らし、書き、食べたその家で、石牟礼文学との出会いから古本屋を始めたおふたりに話を伺いました。

取材中、直美さんは、この家で古本屋を開くことについて、息子さんやご親族、水俣・熊本で石牟礼道子を支えてきた方々の協力があって実現したこと、そして「石牟礼道子さんは亡くなられていて、ご自身から許可をいただいたわけではないので、道子さんの視線も感じます」と話されました。

その言葉を、石牟礼道子の仏壇を目の前にして聞く。店内を見渡せば、実際に使われていた家具や小物が残る書斎のすぐそばに本が並び、お客さんがやってきます。近所の人が顔を出し、全国から本が送られてくる。石牟礼道子が暮らした家は、いま、カライモブックスという一軒の古本屋として日々営まれています。

インタビューでは、その場所でどのように店を営み、お客さんと接しているのかも詳しく伺いました。記事を読むときにはぜひ、おふたりの言葉とともに、私たちがどんな場所に座ってその話を聞いていたのかも想像していただければと思います。

PFP活動報告

10月10日(土)、神戸でジュンク堂書店創業者・工藤恭孝さんの公開インタビューを開催します!

いまでは当たり前に見える「ジュンクらしさ」は、いつ、どこで、どのように生まれたのか。創業者の工藤恭孝さんに伺います。

今回の公開インタビューは、日本出版学会関西部会との共同開催です。ジュンク堂書店の原点である神戸で、創業者ご本人から、その歩みと書店づくりについてじっくりお話を伺います。PFPのインタビューを実際に会場で聞いていただける貴重な機会です。ぜひご参加ください!

【開催概要】
日時:2026年10月10日(土)14:00~16:00(13:15開場)
会場:珈琲春秋 Kobe 三宮店
登壇:工藤恭孝さん(ジュンク堂書店創業者)
聞き手:出版フィールドワークプロジェクト代表
参加費:2,000円(コーヒーまたは紅茶付き)
支払い:当日支払い・現金または各種キャッシュレス決済
予約方法:フォームより受付
問い合わせ先:pfpproject2025@gmail.com
主催:日本出版学会(出版フィールドワークプロジェクト/関西部会)

▼詳細・お申し込みはこちら
https://forms.gle/d8VXWhFDq12VUeub7

Book in Action!!(6)

「水俣に来てくれてありがとうございます」。昨年11月、初めて水俣へ行ったとき、相思社の方から言われた言葉です。そもそものきっかけは、熊本県八代市出身のPFPメンバーが「次は熊本に行きたい」と言ったことでした。私は以前から水俣に関心があり、石牟礼道子の『苦海浄土』『椿の海の記』を読み、土本典昭の『わが映画発見の旅』を読み、『水俣曼荼羅』を観ていました。だったら水俣へ行こう。水俣にはカライモブックスがある。そこで本の即売会とトークイベントをやろう。そんなふうに話が膨らんで、PFPのメンバーたちと水俣へ向かうことになりました。

水俣に行ったこともない人間が、水俣について何かを言っていいのだろうか。そんなことを考えていました。もちろん、行ったからといって何かがわかるわけではありません。三日間いただけです。でも、行かなければわからなかったことはたくさんありました。カライモブックスの奥田順平さんと奥田直美さんに会い、石牟礼道子が暮らした家で本を売り、出版の仕事について話をして、一緒に飯を食い、飲酒しました。写真家の森田具海さんにも会いました。ほかにもたくさんの人に会いました。話を聞けば聞くほど、水俣について詳しくなるどころか、だんだん「水俣」がわからなくなっていきました。

考えてみれば当たり前です。「水俣の人」などという人はいません。そこには奥田順平さんがいて、奥田直美さんがいて、森田具海さんがいる。それぞれ違う人で、それぞれの来し方があり、考えていることも違います。本や映画を通して私のなかにできていた「水俣」という輪郭が、人に会うたびに崩れていく。それはとてもよいことだったのだと思います。

二日目の夜、奥田さんたちとの打ち上げに、順平さんの知り合いの甘夏農家の方が顔を出してくれました。その方も私たちに言いました。「水俣に来てくれてありがとうございます」。また言われた。他の土地へ行って、そんなことを言われた記憶がありません。「ようこそ」とか「楽しんでね」とか「なんでこんなところに来たんですか?」はある。でも「来てくれてありがとう」はない。なぜ水俣へ来たことを感謝されるのだろう。三日間いただけの私には、その「ありがとう」が何を背負っているのかわかりませんでした。いまもわかりません。でも、ずっと残っています。

帰る前の晩、奥田さんたちと別れるのがさみしくなりました。「また来ます」と言って、そのままになることはいくらでもあります。私も何度もやっています。でも、今回はそれがなんだか不愉快でした。もっと話を聞きたい。この二人にPFPをしよう。オンラインでもできる。でも、もう一度ここへ来て、直接話を聞こう。

それから半年後の今年の5月、私はまた水俣にいました。(榎)

編集後記

第6号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回は、カライモブックス・奥田順平さん、奥田直美さんのインタビュー前編をお届けしました。次号では後編「ちっちゃく生きる」をお届けします。ほんの少しだけ扱う新刊、お客さんへ本を送るときに添える一筆箋、カライモ学校のこと。そして、カライモブックスのかたわらで直美さんが続けている校正の仕事についてもじっくり伺いました。古本屋の日々の営みから、文字と向き合う仕事まで。おふたりの仕事と暮らしをさらに掘り下げます。次号もぜひお付き合いください。

***

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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それでは、次号でまたお会いしましょう。

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