出版フィールドワークプロジェクトとはなにか?

きっかけ : 出版遺産を残したい
今年(2025年)3月にある出版社の会長が亡くなられた。ご縁があってたいへんかわいがっていただいていた。よく飲みに連れていってもらい、そこでは編集者として彼が手掛けた本の内容の話から、ベストセラーの二作目が不発で大量の返品をうけるはめになった営業時代の話など、貴重なお話をたくさんしていただいた。お通夜にはとても多くの方がいらっしゃっていて、その人望に圧倒された。しかし、彼の言葉は知る人ぞ知るものとなってしまった。
聞いてみたいこと、知っておくべきことがたくさんあった。このまま何も知らず、そして知らしめることなく、埋もれていくのを放っておくのはもったいない。出版に携わるいろんな人から話を聞き取り、それをまとめて出版遺産として残したい。出版とは何か。いい話、おもろい話、とんでもない話、他愛のない話を残したいというやむにやまれぬ身体的な衝動なのである。
一方で、人文系版元の多くは研修や学びの機会が少ない。上製か並製かを判断する基準は? 書いてもらいたい著者に会うにはどれくらい著書を読んでから行けばいい? 何文字何行で組むと読みやすい? 営業であれば、常備の必要性とは? 延勘に3ヶ月が多いのはなぜ? 書店さんと打ち解けるまでに何度訪問すればよい? 悩みは尽きないし、教えてくれる先輩はいてもそう毎回聞いていられない。日常のふとした際にそんな声を聞く。そんなときに、出版人たちがどういう風に考えて、どういう方法で仕事をしていたのか。それを知るためのアーカイブを築きたいと思うようになった。
活動内容 : 「行為を聞く」
実践知に飢えている若手たちが長く出版に携わってきた先達の率直な語りを聞くことで、知られざる業績と技術を明らかにしていく。ひとりひとりの語りは地味で凡庸かもしれない。すぐに役立つこともないかもしれない。しかし、自らの仕事を頼りに生き抜いてきた先人たちにしか発しえない言葉が必ずあるはずだ。その言葉にこそ、本をつくること、本を届けることの本質がつまっているのではないだろうか。それらが集積されたものを読むことで、新たな発見や気付きを得られるはずだ。
なにを聞くか
暗黙知や経験則、出版人としての心構えを言葉として残す。
「何をやったか」だけでなく、「どうやってやったのか」という行為のプロセスに迫る。その行為を可能たらしめた時代背景もつぶさに聞いていく。
業務の細部に及ぶ具体的な行為(組版の選択理由、フォント選び、出荷・倉庫業務、重版判断のタイミング、フェアや常備の工夫、本を売るためのパッケージづくり…)を掬い上げる。
だれに聞くか
編集者だけでなく、営業や製作など、普段光の当たらないセクションの人々からも話を聞く。
書店や取次、版権会社、製本所など出版を取り巻くステイクホルダーからも話を聞く。
技術や業績に固執せず、多様な語りが集合したときの「おもしろさ」を重視する。
集積されたその語りが若い出版人の財産として残ることを目指す。
目指すもの : ブック・イン・アクション
本は著者の思い付きが最終的には本というメディアに変化する。そのあいだに、編集、紙屋、組版会社、印刷所、製本所、営業、倉庫会社、取次、書店、図書館などのさまざまな「アクション」によって本は本となっていく。その工程と執念をまとわずして本は本とは呼べず、その工程と執念によって本はその強度を増し、あらゆるメディアとも引けを取らない唯一性をまとうのではないか。燃やされても再現し、禁じられても残る。であれば、その工程と執念を人々に開き、本の持つあらゆるメディアに対する優位性を提示する。本はどこからきてどこへ向かうのか? これからさまざまな出版人から伺うであろう細かい日々の業務を通じて、本というメディアの復権を目論む「ブック・イン・アクション」構想も私たちの目指すところである。
一緒にやってみたい人、興味のある人
本プロジェクトを一緒にやってみたい人、興味のある人は下記のアドレスにご連絡ください。
また、お問い合わせも下記よりお願いいたします。
pfpproject2025(at)gmail.com
※(at)は@に置き換えてください。
担当:榎本周平・文平由美
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