読んで、読んで、読む(太田和徳さん/中央公論新社)

中央公論新社・太田和徳さんのインタビュー前編「読んで、読んで、読む」を公開しました。
出版フィールドワークプロジェクト 2026.08.21
誰でも

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中央公論新社・太田和徳さんのインタビュー前編「読んで、読んで、読む」を公開しました。

「やっぱりいいものは記憶に残る」。

完結した全200巻の随筆シリーズを読み込み、一冊の名言集へと編み上げる。編集プロダクション、小さな出版社、制作、営業、フリーランス——。太田さんは、それぞれの現場でどのように仕事を学び、企画を生み出してきたのかを語ります。その原点が詰まった内容です。編集者はもちろん、これから出版の仕事に携わりたい方にもぜひ読んでいただきたい前編です。

編集の舞台裏

今回の記事で印象的だったのは「読む」ということの意味でした。太田さんは作品社時代に『日本の名随筆』全200巻を読み込み、そのなかから『随筆名言集』を編まれています。それだけでも驚愕ですが、興味深かったのは読書と仕事の経験が決して別々のものではないということでした。

インタビューでは『歴史群像』で担当した特集が、後に『源義経の時代』というアンソロジー企画につながった話や、第二次世界大戦を扱う仕事が『戦略論の名著』の企画へ結びついた話が登場します。若い頃の仕事や読書、人との出会いが、何十年もの時を経て一冊の本へと結実していく。その積み重ねが編集者としての引き出しになっているのだと感じました。

このインタビューは一人の編集者の経歴をたどるだけではありません。何を読み、何を学び、何を経験し、それらをどのように一冊の本へと結びつけていくのか。その思考と判断の積み重ねこそ、私たちが未来へ残していきたい出版の実践知なのだと感じました。

PFP活動報告

今週もいくつかのインタビューや企画が同時に動いています。

先日、小学館でアクセシブル・ブック事業に携わる木村匡志さんと、インタビューに向けた事前打ち合わせを行いました。オーディオブックや電子図書館、読書バリアフリーなど、現在のお仕事について伺いながら、インタビューで何をお聞きするかを考えています。

装丁家・松田行正さんのインタビューに向けた質問づくりも進めています。本をどのように読み、何を拾い上げ、装丁へと落とし込んでいくのか。松田さん自身がほかの本の装丁をどのように「見ている」のか。今回もみんなで質問を出し合っています。

また、先日はメンバーで集まり、サントリー文化財団からいただいた助成金の活用や、地方フィールドワークについて話し合いました。メンバーから出してもらった候補をもとに訪問先も決定。10月に予定している関西でのフィールドワークでは、公開インタビューイベントの準備も進めています。詳しくは改めてお知らせします。

Book in Action!!(4)

8月8日と9日、浅草で開催されたブックマーケットに出展しました。2日間、本を並べ、売り、読者と話し、同業者と話し、とにかくたくさんの人に会いました。内容のすばらしさを話し、造りのおもしろさを見せ、なぜこの本を読んでほしいのかを伝える。そうして本を売りまくりながら、出版とは何なのかを考えていました。

出版について考えるとき、私たちはつい「出版業界」という大きな主語で考えます。市場はどうなっているのか。流通にはどんな問題があるのか。出版社や書店はどう生き残るのか。でも、PFPが聞いてきたのは少し違います。なぜその本をつくったのか。なぜその部数にしたのか。なぜその本をその棚に置いたのか。そのとき、何を見て、どう判断したのか。そこにあるのは、名詞としての「出版」ではなく、動詞としての「出版」です。読む。考える。企画する。頼む。書く。直す。組む。選ぶ。刷る。折る。綴じる。包む。運ぶ。仕入れる。並べる。薦める。売る。買う。読む。そして、また誰かが読む。一冊の本は、無数の人の無数の行為を経て、読者へ届きます。でも、そこで終わりではありません。読んだ人が考え、誰かに語り、薦める。その先でまた誰かが本を手に取る。行為はぐるぐると続いていきます。

ブックマーケットに立っていると、それが目の前で起きていました。他社の本を薦める。出版社や書店の人と話をして、そこから次のインタビューが決まる。秋田の出版社の方と話していたら、今度は秋田へ行ってみようという話になる。本を売りに来ただけなのに、次の行為が次々と生まれていきます。ある若いお客さんが一冊の哲学書を手に取りました。「いま、こういうことをちゃんと考えないといけないと思って」と仰るので、担当編集者に説明を代わってもらい、その人は編集者としばらく話し、本を買っていきました。お客さんが去ったあと「これはちょっとうれしいなぁ」と言うと、担当編集者が「タイトル、これにしてよかったです」と答えました。

本をつくる。並べる。誰かが手に取る。会話する。買う。読む。その先で何が起きるのかはわかりません。でも、その本が何かを考えるきっかけになれば、そこからまた次の行為が始まります。ひとつの行為が、次の行為を生む。本は行為の集積であり、出版は行為の連鎖です。PFPが記録したいのも、この連鎖なのだと思います。「あなたはどうやって仕事をしてきたのですか」と聞き、その具体的な仕事をたどっていく。個別から始め、また別の個別へ行く。誰も出版全体を語っていないのに、そうした仕事を積み重ねていけば、無数の行為と関係のあいだから、少しずつ「出版」が立ち上がってくるのではないか。具体的な仕事を記録する。その集積が、結果として出版の記録になる。2日間、浅草で本を売りまくりながら、そんなことを考えていました。疲れたぜ。(榎)

編集後記

第4号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回は、中央公論新社・太田和徳さんのインタビュー前編をお届けしました。次号では後編インタビュー「読んで、考えて、絞り出す」をお届けします。中央公論新社での編集の仕事やオリジナル文庫づくりなど、さらに踏み込んだお話が続きます。そしてPFPも、インタビュー、記事づくり、イベント、フィールドワークと、あちこちで動いています。その様子も引き続きお伝えしていきます。

***

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

出版フィールドワークプロジェクト(PFP)は、出版社、書店、取次、印刷所、製本所、図書館など、出版に携わる方々へのインタビューを通して、現場に蓄積された知恵や技術、そして経験を記録・公開するプロジェクトです。

このメルマガでは、新着記事に加え、編集の舞台裏や活動報告、イベント情報、出版について考えたことなどをお届けしていきます。

出版の現場に息づく仕事や判断を、次の世代へ手渡していく。この活動にご共感いただけましたら、ぜひ引き続きお付き合いください。また、おもしろいと感じていただけましたら、出版に関心のあるご友人やお知り合いにもご紹介いただけますと幸いです。

それでは、次号でまたお会いしましょう。

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