工夫の余地はある(柏書房取締役/元筑摩書房代表取締役社長・菊池明郎さん)
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柏書房取締役/元筑摩書房代表取締役社長・菊池明郎さんのインタビュー後編「工夫の余地はある」を公開しました。
ちくま文庫・ちくま新書を立ち上げ、書店とともに売り方を考え、『老人力』『金持ち父さん、貧乏父さん』『思考の整理学』など、数々のベストセラー、ロングセラーを生み出してきた菊池さん。そこには、データを集め、実験し、人から学び、また試してみるという仕事の積み重ねがありました。
そして話は、出版社同士の連携から、現在の出版界へ。「今の出版状況は非常に厳しい」と語る菊池さんが、それでも「工夫の余地はある」と考える理由を伺いました。
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https://note.com/pub_field_prj/n/n121c649cbed1
編集の舞台裏
前編の「編集の舞台裏」では、公開インタビューのあとに追加質問をお送りしたことを書きました。後編では、その追加質問がどのように生まれたのか、もう少し具体的にご紹介します。
たとえば、『老人力』の10万部重版の話。当時把握できた主要36店の売上データから全国の売れ行きを推測し、「10万部重版だね」と営業部員全員で判断した、と菊池さんは話します。おもしろい。しかし、読み返すと疑問が出てきます。36店で何冊売れたら、10万部刷っていいのか。
そこで、あらためて質問しました。すると、主要書店のデイリーの売上から全国の売れ行きを予測し、書店からかかってくる電話の本数も傾向をつかむ材料にしていたことがわかりました。聞いたときにはわかったつもりでも、文字にするとわからなくなる。そこからもう一度聞くと、仕事の具体的な姿が見えてきます。
また、終盤の現在の出版界についての話は、会場のみなさんから寄せられた質問を手がかりに、あらためて問いを組み立て、菊池さんに答えていただいたものです。公開インタビューには、その場にいた人たちの問いもあります。それを持ち帰り、調べ、問い直して記事にしていく。今回の後編は、会場のみなさんと一緒につくった記事でもあります。
PFP活動報告
9月29日には、小学館の木村匡志さんにインタビューしました。アクセシブル・ブックの取り組みを中心に、「読書」の幅、そして「本」の幅そのものを広げていく実践について、じっくりお話を伺いました。
そして10月はいよいよ関西です! 10月10日は神戸で、ジュンク堂書店創業者・工藤恭孝さんの公開インタビュー。翌11日は大阪で、ジュンク堂書店を支えた岡村正純さん、福嶋聡さんへのインタビューを行います。2日間で3人、たっぷり話を聞いてきます。
工藤さんの公開インタビューはいよいよ今週末。残席もわずかとなりました。ジュンク堂書店がどのように生まれ、あの大きな売場をつくっていったのか。創業以前から書店づくり、出版流通まで、じっくり伺います。ご関心のある方は、ぜひ神戸へ。
▼詳細・お申し込みはこちら
https://forms.gle/d8VXWhFDq12VUeub7
そして12月5日、新潟で開催される日本出版学会の秋季研究発表会では、PFPのワークショップ「地域書店は何を支えてきたのか――出版フィールドワークプロジェクト」を行います。新潟県上越市で111年にわたり営業を続ける春陽館書店の熊田僚己さんを迎え、其池勇気、文平由美がインタビューします。
店頭販売だけでなく、学校や図書館、官公庁、企業への外商や教科書販売など、地域書店には外から見えにくい仕事があります。そうした仕事を聞きながら、地域に本が届くとはどういうことなのか、参加者のみなさんと一緒に考えます。
Book in Action!!(9)
はじめは何も考えていませんでした。若手の人たちと勉強会をしていて、その仲間とこういうことをしようとはじめたのがPFPです。きっかけはいくつかありますが、この場の中心になっているのは勉強会のメンバーです。そのため、私のことはよーく知っているし、それなりに信頼関係もある。はず。あるよね? なかったらごめんなさい。
なので、知り合いばかりのプロジェクトでした。知っている人に声をかけるし、知っている人に声をかけられる。それが変わったのがちょうど1年前でした。
あるメンバーと出会いました。その人は私と初対面で、出版学会の申込書を、名刺を渡すより前に渡してきました。「入りたいんですけど」。驚きました。私は極悪人かもしれません。どんな人なのかも知らないはずです。活動がどういう頻度で、どういうことをしているのかも詳しくは知らないはずです。
その日は受け取りませんでしたが、そのときの言葉が忘れられません。入社して5年ほど、自分の仕事を相対化し、それをとりまく環境をきちんと知りたい、というようなことを言っていました。切実だな、と。まさに私が若いときに思っていたことでした。
PFPが外に開かれた瞬間でした。そして、私のことを知っているからではなく、PFPがやっていることそのものに惹かれて、入りたいと言ってくれた人がはじめて現れた瞬間でもありました。
それからPFPは、知っている人たちだけでやるものではなくなったように思います。知らない人が入ってきても、一緒に楽しく活動できる場にしなければならないと思うようになりました。そしてその子は、1年経ってプロジェクトの中心となって活躍してくれています。私より活躍しています。私の立つ瀬がありません。少しは抑えてほしいですね。(榎)
編集後記
第9号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回は、柏書房取締役/元筑摩書房代表取締役社長・菊池明郎さんのインタビュー後編「工夫の余地はある」をお届けしました。次号は、勁草書房/前東京大学出版会専務理事・黒田拓也さんのインタビュー前編「数字を知ったうえで、可能性に賭ける」をお届けします。編集者としての仕事から、営業、電子書籍、そして学術書の採算まで。出版社で本をつくることを、数字と可能性の両面から伺います。
出版フィールドワークプロジェクト(PFP)は、出版社、書店、取次、印刷所、製本所、図書館など、出版に携わる方々へのインタビューを通して、現場に蓄積された知恵や技術、そして経験を記録・公開するプロジェクトです。
このメルマガでは、新着記事に加え、編集の舞台裏や活動報告、イベント情報、出版について考えたことなどをお届けしていきます。
出版の現場に息づく仕事や判断を、次の世代へ手渡していく。この活動にご共感いただけましたら、ぜひ引き続きお付き合いください。また、おもしろいと感じていただけましたら、出版に関心のあるご友人やお知り合いにもご紹介いただけますと幸いです。
それでは、次号でまたお会いしましょう。
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