課長にするなら残る(柏書房取締役/元筑摩書房代表取締役社長・菊池明郎さん)
1971年、筑摩書房に「補欠」で入社した菊池さん。地方の書店や学校、図書館を回って本を売る仕事を覚え、会社が経営危機を迎えると、営業改革のプランを携えて「課長にするなら残る」と販売課長に就任します。
売れない本を無理に送るのではなく、売上スリップを集めて実績を調べ、配本や常備を見直す。さらに定価や部数、本づくりのコストにも目を向けていく。筑摩書房の再建を支えた営業の実践と、その仕事術を伺いました。
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https://note.com/pub_field_prj/n/n2f0747b03b9b
編集の舞台裏
今回のインタビューは、2026年5月30日に行われた日本出版学会春季研究発表会のワークショップ「出版フィールドワークプロジェクト――もうひとつの出版学」で収録したものです。つまり、いつものように机を囲んでじっくり話を聞いたのではなく、聴講者のみなさんの前で行った公開インタビューでした。
聞き手を務めたのは、出版社の営業として働きはじめて4年目の其池勇気です。冒頭で其池は、「営業とは何か、本を売るとは何かを考えはじめたところです」と菊池さんに話しています。50年以上にわたって出版の現場を歩んできた菊池さんに、若手の営業が仕事のやり方を聞く。PFPでやりたかったことが、そのままかたちになったようなインタビューでした。
ただし、公開インタビューをそのまま記事にできるわけではありません。記事化にあたってあらためて読み返すと、もっと聞きたいこと、具体的に確認したいことが次々と出てきました。そこで菊池さんには追加質問をお送りし、回答をいただいて本文に組み込んでいます。今回の記事には、会場で交わされた言葉と、その後のやり取りが一緒に入っています。
インタビューは、聞いたその場で終わるものではない。文字にして読み、わからないことを調べ、もう一度問い直す。そうして少しずつ記事になっていきます。公開インタビューから約4か月。ようやくみなさんにお届けできます。
PFP活動報告
9月の尾鷲でのフィールドワークを終え、しばらくは遠出もインタビューもない休憩期間です。ヤッター! 休みや! と思いきや、PFPの仕事は休みなしでした。というか、なんかやっちゃうんですねぇ。PFP中毒なのかな。休みを1週間作ったはずなのに、新しい企画を思い付いてしまい、先方に打診をしたら、二つ返事で「やろう!」となるもんだから、せっせこと企画書書いてスケジュール切って、やりたいメンバー集めて、飲酒して。
ということで、新企画「PFPマルシェ――Book in Action!!」やります! 本ができて読者に届くまでには、どんな人たちが、どんな仕事をしているのか。「一冊の本ができるまで」を軸に、本をつくり、届ける人たちのトークや、実際に仕事で使われている道具、造本、出版用語などを通して、普段は見えない出版の仕事をひらいてみます。そして最後は、今度はPFPが読者のみなさんにインタビューします。本を選ぶ。買う。読む。積む。薦める。誰かに話す。読者もまた、本を動かす「Book in Action!!」の一員です。詳しい内容は、もう少し先にお知らせします。お楽しみに!
そして、10月10日(土)は神戸で、ジュンク堂書店創業者・工藤恭孝さんの公開インタビューを開催します! ジュンク堂書店はいかにして生まれ、あの巨大な売場はどのようにつくられていったのか。創業前夜から大型書店への展開、そして神戸という街と書店について、たっぷり2時間伺います。
まだお席がありますので、関西のみなさま、ぜひ神戸でお会いしましょう!
▼詳細・お申し込みはこちら
https://forms.gle/d8VXWhFDq12VUeub7
Book in Action!!(8)
なんともこの「Book in Action!!」は、毎回なにかしらの学びを得ている、というふうで、これだと私以外の人が書きにくい。「もっとふざけるべきである。現実世界の榎本はたいていふざけているのに、このエッセイだけまじめぶっていけない」などと言われ、もっとふざけるべきだと私も思う。しかし、そんな勇気は私にはない。なんせ、約300人の人が読んでいるのだから。これは恐怖である。
和歌山県新宮市に行ってきました。中上健次の生まれ故郷です。私の地元三重県尾鷲市から車で1時間ちょっと。途中、熊野市の「食堂あお」でランチを食べる。これが大変おいしかった。新宮へ行く直前にトンガ坂文庫の本沢さんにおすすめを聞いたのです。そのとき、「どんな感じなの?」と聞くと、「なんかいっぱい出てくる」と言っていました。意味が不明でしたが、私もいまここで「いっぱい出てくる」としか言いようがありません。つまり、たくさんの種類のおかずが、少なめにたくさんある、という感じ。説明がむずかしいですね。いっぱい出てきます。おいしかった。熊野市駅前にありますので、ぜひお立ち寄りください。
そこから車で30分。新宮市に着きました。三重県と和歌山県を分かつ熊野川に架かる橋を越えると、新宮市です。42号線をまっすぐ行くと左手に荒尾成文堂があります。郷土の棚が充実しており、それとは別に中上健次の棚もまた充実しています。全集、選集はもちろん、中上健次に関する本がずらりと並んでいます。なかでも新宮市立図書館が発行している『熊野誌』はバックナンバーも含めて数多く在庫しており、これは買いでした。同級生から見た中上健次という特集をしている号があり、合唱部時代の中上健次の姿が読めます。興奮しながら棚を眺めます。毎日行きたい書店です。
店主の荒尾さんはご不在でしたが、娘さんお二人と少しお話をしました。次に伺うのは年末。ぜひインタビューをさせてほしいとお願いをしました。店主は中上健次の2つ年上、交流もあったそうで、すでにおもしろい話をいくつか伺いました。早くインタビューしたい。休みはどこへ行ったんや。(榎)
編集後記
第8号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。今回は、元筑摩書房・菊池明郎さんのインタビュー前編「課長にするなら残る」をお届けしました。次号は後編「工夫の余地はある」。ちくま文庫・ちくま新書の立ち上げから、数々のベストセラー、そしてこれからの出版界まで。「今の出版状況は非常に厳しい」と語る菊池さんが、それでも「工夫の余地はある」と考える理由を伺います。どうぞお楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
出版フィールドワークプロジェクト(PFP)は、出版社、書店、取次、印刷所、製本所、図書館など、出版に携わる方々へのインタビューを通して、現場に蓄積された知恵や技術、そして経験を記録・公開するプロジェクトです。
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それでは、次号でまたお会いしましょう。
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